ローズヒップをみながら、ふと肺腺癌治療のあの頃を思い出した
雑木の庭には素朴な薔薇が似合う、原種のバラ、ドックローズを私は数年前に植えた。
今の時期は赤い実(ローズヒップ)がなる。
忘れもしない五年前のいまごろ、肺腺癌の治療が始まって二週間が経過していた。
髪が病室のあちこちに落ちているけどどうしたのかしら。
ローラーで取ってもとってもきりがなかった、そのうちにガサツと髪が抜け落ちた。
私の髪は抜けないものと不思議な自信みたいなものがあったので、何の用意もなかった。
朝起きるとがさっと髪が抜けおちた、とりあえずタオルを髪に巻いた。
売店が開くのを待ってピンクのヘアーキャップを買ってきて、頭にすっぽりかぶった。
家族に頼んでショートヘアーウイッグを取り寄せてもらった。
それをつけると、まだ71才になる前であったけれども若作りになれたようなきがした。
食欲は減退してしまうし、髪は抜けるしだったが、パソコンを個室に持参してHPのブログを更新し続けた、気持ちがそちらの方に向いていた。
肺腺癌の治療は、私の身体の様子を見ながら肺がん専門分野の主治医のM先生が、献身的にしてくださっているので、絶対的な信頼でおまかせしていた、心配は特になかった。
医療スタッフの皆さんから、いたわりの心で接していただいて、私はすべてにおいて満足のいく入院生活を送らせていただいた。
毎日、回診してくださる、お若い心優しい主治医の先生には情が移っていた。
癌は治ると確信みたいなものがすでに芽生えていた。
肺腺癌の治療を終えて退院してから、いつ頃だったか忘れてしまったが「もういつ死んでもいいわ」とマル夫さんに話したことがあった。
マル夫さんは、主治医のM先生があれだけ献身的に治してくださったのに、なんという事を言うのだ、と叱られた覚えがある。
そうだったM先生が助けてくださった命を、大切にしなければ罰が当たると大いに反省した。
それ以来いただいた命を大切に生きようと決意した。
お陰様でこのように元気に過ごしていられるのも、M先生との運命的な出会いがあったからこそである。
ずうっと診てあげますよとおっしゃって下さっているけれども、M先生に死にざまを見られたくないから、老けたくないと子供じみた可笑しなことを思っている。
そんなところが私の可愛いところかしらと自分自身をおもう。
五年生存者として、お陰様で命の尊さを深く感じている今日この頃である。
(2021.12.12 日曜日 18:12 記す)