がんの宣告
ちょうど一昨年の今頃であった。
専門病院の先生から私の肺腺がんの状態についてご説明があった。
私のほかに身内5人が聞きに来てくれた。
同居のお嫁さんも仕事をお休みして一緒についてきてくれた。
みんな私のことを心配してくれている、有難いほんとうに嬉しかった。
身内は主治医となる先生から詳しい説明をしっかり聞いているようだった。
私は頭の中がいっぱいで、先生のお話が頭に入らない。
現実として受け止めることも出来ないし、実感もわかない。
ただ、来るべき時が来たと非常に冷静だったことは確かだった。
今日の誕生花は「クリスマスローズ」
※ 中世ヨーロッパではクリスマスローズの香りが病人から病を取り除くと信じられていたそう。
花言葉は: 不安を和らげて 慰め
父の家系は癌家系だった。
父は、いつか癌を患うのではないかと気にしながら生きていた人だった。
平成元年7月初旬のことだった。
風邪気味のようだが熱が下がらないと母から電話があった。
総合病院で見てもらうことをすすめた。
すぐに入院することとなった。
末期のすい臓がんが見つかり、3か月闘病の末、平成元年10月になくなった。
今の私の年齢だった。
臆病なくらい神経質に癌のことを気にしていた父だった。
父の姿を見ていたので、病気を常に心配しているよりも、病気にかかって治す時のほうが安心感があると思った。
身体の何処も痛くも痒くもない、肉体的にも精神的にも元気であった。
そのころ、私は趣味程度の仕事をしていた。
だが、私の癌の状態をお聞きするにつけ、早く癌細胞すべてを体外に排出してもらいたいという思いが募った。
様々なことが脳裏をかすめた。
主治医の先生はひと通り説明を終えられると「大丈夫ですよ」と爽やかな笑顔に戻られた。
私はほっと安心して涙があふれた。
先生に握手を求めていた。
主治医の先生と心が通った瞬間のような気がした。
癌の宣告を受けた後も、案外平常心で過ごし、眠れないということはなかった。
別段気にかかることもなかったので、来週早々にも入院させて欲しいと主治医の先生に懇願した。
入院日は2016年11月28日だった。